2017年8月28日月曜日

小型電気自動車を開発するスタートアップ

筆者の住むMountain Viewは、グーグルの本社のある街であり、Waymo(グーグルの子会社)の自動運転車が日常的に街中を走っています。(筆者の家のすぐ近くの交差点で、自動運転車が事故を起こしているのに出くわしたこともあります。)

新しいことを試してみたい人が多く集まる街であることもあり、変わった乗り物に乗った人をたまに見かけます。変わったタイプの自転車に乗っている人もよく見かけますし、変わった小型電気自動車に乗っている人もたまにいます。

今回は、北米で小型電気自動車を開発するスタートアップ企業について紹介したいと思います。

まずは、ZEV社。ZEV社の3輪小型電気自動車T3-1 Microの価格は6,300ドル。

写真:http://www.zelectricvehicle.com/31.html

Arcrimoto社の3輪小型電気自動車は、$12,000ドルと、かなり高め。

写真:https://www.arcimoto.com/vehicle/

それから、カナダのVelmetro社。Velmetro社のVeemoは、自転車として分類され、自動車免許が不要だそうです。ブリティッシュ・コロンビア大学のキャンパスでこの秋から、テスト走行が始まるとのこと。

写真:https://www.velometro.com/veemo/

トヨタ社も、街乗りに最適なのは小型EVであるとしてi-Roadというコンセプトカーを発表しています。

このような小型電気自動車は現在はコアなファンが購入し、利用しているという状況ですが、これから価格が下がってくると利用も増えてくるのでしょうか。比較的場所を取らないので、大学や会社のキャンパス内での利用には向いているように思えます。

2017年8月16日水曜日

電気自動車DRアグリゲーションの難しさ

PG&EとBMWが協力して実施していたパイロットプロジェクトのPhase1の結果が出ていました。

2015年7月から2016年12月までの18ヶ月間のパイロットプロジェクトで、計209回、19,500KWhのデマンドレスポンス(DR)を提供したとのことです。プロジェクトには100台のBMWi3が参加。車による電力削減量がDRの最小単位(100KW)に十分でない時には、2次利用の蓄電池からの電力を施設で使用することでDRを達成。結果として、平均で20パーセントのDRが車により、残りの80パーセントは蓄電池により行われたそう。

プロジェクトに参加した電気自動車は100台とのことですが、そのうちDRイベントに参加した車は平均で7台。まだまだ、電気自動車のDRへの利用は難しいことが分かります。車の第一の存在意義は移動に使われること、であるため、電気自動車のDRで安定して結果が得られるようになるには、多くの参加者・規模が必要になります。停まっている車が常に充電されているわけではない、という点も鍵です。

参考までにですが、夜中の11時-2時のPG&Eの電力料金の安い時間には、(その時間に充電している人が多いため)、車のDRイベントへの参加率も高かったそうです。

(source: http://www.pgecurrents.com/wp-content/uploads/2017/06/PGE-BMW-iChargeForward-Final-Report.pdf)

先日、DRAM2018&2019の最新情報についての記事を書きました。その中で、電気自動車を対象としたデマンドレスポンスをアグリゲーションするeMotorWerksが今回は入らず、まだまだ電気自動車のDRアグリゲーションが難しいようである、と記しましたが、こちらのBMWの実証実験からも、同様のことが窺えますね。

【追記】facebookでコメントを頂いたので、こちらに追記しておきます。こちらは現行のCAISOのPDRに参加する上での現状の課題について書いたものです。将来のDRについては、以前書いた記事を参考にしてください。

2017年8月15日火曜日

シリコンバレーのCCA

CCAという言葉を聞いたことがあるでしょうか。CCAとは、Community Choice Aggregationの略で、市やカウンティなどの地方自治体が自ら電力を調達し、(電力会社の電力網を通じて)、地域住民によりグリーンな電力を提供できるようにするプログラムです。


(写真:https://www.svcleanenergy.org/about-us)

例えばシリコンバレーのCCAであるSVCE (Silicon Valley Clean Energy)では、Green Startという、供給される電力の半分が再生可能エネルギーとなるプログラム(PG&Eの価格に比べて平均で0.5%だけ安い)とGreen Primeという
供給される電力の100%が再生可能エネルギーとなるプログラム(PG&Eの価格に比べて平均で3-4%だけ高い)の二つを用意しています。

SVCEはMountain View市やCupertino市、Los Altos市などシリコンバレーの12のコミュニティによって作られた組織です。

カリフォルニアのCCAには他にも、Peninsula Clean Energy, MCE clean Energy, Sonoma Clean Power, Lancaster Choice Energy, Clean Power SFなどがあります。

追記:2018年のSVCEの電力料金と電力MIXについてはこちらをご参照ください


2017年8月10日木曜日

8月21日の日食がグリッドに及ぼす影響は?

8月21日の午前10時頃にカリフォルニアで日食が予測されており、その影響で最大5000MW以上の太陽電池の発電が失われるとのことです。


(source: CAISO)

CAISOではグリッドマネージメントのため去年から色々と対策をしており対策は全て済んでいます(のでおそらく停電などの問題はほとんど起こらないはず)が、1週間前にも需要の精査と市場参加者からの供給の確認を行い、当日もリアルタイムの需要予測の反映を厳重に行うそうです。(対策の詳細が知りたい方はCAISOの資料を見て下さい)。

また、これに合わせてデマンドレスポンス関連の会社(例えばOhmConnectやeMotorWerksなど)が、消費者へのデマンドレスポンスへの協力を大々的に呼びかけています。DRがどのくらい貢献できるのか、興味深いです。

2017年8月8日火曜日

『超小型電気自動車』が流行る町の実態


アメリカのアトランタ郊外にある町、Peachtree。この町は、NEV(Neighborhood Electric Vehicle)が流行っている町として知られています。

NEVなどというとカッコいい響きがあるものの、その実態は、ゴルフカートです。人口3万4千人の町で、9000世帯以上がゴルフカートを持っているというのですから、驚きです。


60年代にゴルフ場が出来た事がきっかけで、住民のカート利用が始まり、1974年にカートの公道使用が合法化したそう。15歳以上はカート運転可なため、地元の高校への通学は、車よりカートが主流だとか。

ゴルフカートは新車$5000~、中古$2000~程で購入可能とのことです。言われてみれば、町でのチョイ乗りには、ゴルフカートが十分機能しますよね。

私の住んでいるシリコンバレーでも、大学や会社のキャンパスの敷地内では、ゴルフカートが使われているのをよく見かけます。グーグルの敷地内にも、幾つかゴルフカート(おそらく、従業員用ではなく、メンテナンス関係などのスタッフ用)があるのを見かけましたが、充電は、普通の120Vのコンセントから充電されていました。

新たな充電インフラも不要で、安くて使いやすいゴルフカート。可愛らしい外観のものであれば、観光用にも使えそうです。これからも、地域の乗り物として普及して行くかもしれません。

2017年8月6日日曜日

電池の2次利用についての動向

先日、シリコンバレーにあるメルセデス・ベンツのR&Dセンターにて、電池の2次利用についてのセミナーが行われていました。

(多くの参加者がいました@会場)

電気自動車に使われた使用済み電池を、定置用の蓄電池として活用することをビジネスモデルとするスタートアップ(Freewire 社、The Mobility House社)やバッテリー・マネジメント・システムの会社(Nuvation Energy社)、自動車部品メーカーのBosch社などがパネリストとして参加していました。

現在は電池の2次利用に関する技術的な問題は殆どクリアされたフェーズで、また、経済性に関しても、十分に成り立つケースもあるとのことです。高い信頼性の要らない場面では、second life batteryが十分機能するとのこと。電気自動車の増加が世界的に見込まれる今、面白い領域ではあります。

ただ、課題も多いです。今後新品の蓄電池価格が安くなりすぎると、使用済み電池の「安く手に入る」というバリューが薄れますし、マージンもさらに低くなることでしょう。

ところで、会場となったメルセデス・ベンツ社には、最近彼らが出した家庭用の蓄電池が展示されていました。


先日サンフランシスコで行われたInter Solarでも、「メルセデス・ベンツ・エナジー」として大きなブースを出し、蓄電池を宣伝していました。

2017年8月3日木曜日

DRAM 2018&2019 最新情報

2018年と2019年のDRAM(Demand Response Auction Mechanism)の契約者が決定し、CPUC からの承認を待つフェーズに入りました。

最終ラウンドとなる今回は契約容量の総量が200MWにもなります。

契約内容の詳細について、GTMに良い記事があったので、そちらを元に私の方で表に纏めてみました。


電力会社 契約者 契約容量(MW)
SCE OhmConnect 60+
契約容量:99MW Enerwise/Cpower 35
予算: $12M EcoFactor 0.5
GreenChargeNetworks 0.5
Tesla 0.34
電力会社 契約者 契約容量(MW)
SDGE NRG Curtailment Solutions 6
契約容量:14MW OhmConnect 4
予算: $3M Autogrid 1.7
Stem 1.2
Green Charge Networks 1
電力会社 契約者 契約容量(MW)
PG&E EnerNoc unknown
契約容量:80/90MW Ohmconnect unknown
(2018/2019) Autogrid unknown
予算: $12M Sunrun unknown
Tesla unknown

TeslaやEcoFactorが入ってきているのが、いよいよ(やっぱり)、という感じで面白いですし、逆にeMotorWerksなどが入らなかったのは、まだまだアグリゲーションが難しい部分があるのだろうか、と推測が進みます。

OhmConnectが3社全てのUtilityと契約、しかもとても大きな契約容量であることも驚きでした。SCEとは全部で60MWの契約、2019年までに用意できる予定とのことです。結構ストレッチしている目標な気もするので、これからのexecution能力に期待です。

OhmConnectは私が、会社が立ち上がった初期から面白いと目をつけていた会社であり、最近の活発な動きはとても興味深いです。